第4回笹井宏之賞 応募作品 『カラーフィルム』



第4回笹井宏之賞 応募作品 

『カラーフィルム』



リーバイス5センチ折って覗かせる人を信じるユーモアが好き

大雨の日に登下校するイエロー未来にわかる愛の色だよ

誰ひとり取り残さないウイルスのやさしさで書く大文字でLOVE

シロクマのあなたは夏、横でいい 冬、縦になったらそれでいい

うれしさの小さな時限爆弾をこよみに仕掛けて日々サバイヴ

街中に新種の香りをばら撒いて金木犀を癒やしたい

木漏れ日をきみと時間がドレスして光るポカリの結露が終わる

シャッターのタイマー押して駆けていく5,4,3,2で愛を知る

テロップで初めて知った正しい歌詞を前から知ってたみたいに歌う

ジーンスの締めつけほどのストレスを抱えて夜の端まで歩く

A4の紙ですぱっと切れた指 同じ原理で日々を抜け出す

チーズタッカルビのタッの部分であの娘が跳ねる それが例えば韓流少女

肝心な人が更新しないからいま上空です、って嘘ついた

唐突にきみが訳したI LOVE YOU 同じ太陽に照らされている

酔って花の降る光の階段で一瞬の運と永遠の縁

花売りに就職希望のビリオネア 過剰な生花が街に降る

生乾き自意識は毒 でも僕は死ぬまでちょっと湿っていたい

母親の頭に降り始めた雪をカーネーションでやさしくとかす

返り血をなんともなしに浴びながらゴブラン織りのじゅうたんの上

しあわせは創造の敵、って少し嘘 もう一軒いく?AND ALIVE

青々とうるおいレイディ袖のないきみに慣れないずっと触れたい

むきだしのエモでキャンディ噛み砕いて アレクサ、一度きりの夏だよ

いつまでも針が読めない花時計 そんな気に君はさせてくれる

軽率に誘えるあいつとサイゼリヤ 明け方誰かが天使になっていく


バーチャル渋谷ストリート ネットでも穴、空けられますか?耳たぶに

冷房の効いた部屋で着る肉厚のコットンパーカ 安心します

昼間見た満開の桜あの森の奥で夜中もずっと咲いてる

やさしくし・愛し放題のこの街であなたもちゃんと取ってよ採算

I didn't find you, you found me.  夏、きみと鰻を食べに行く


銭湯のマッサージ機で宙、入れ替わる 宇宙飛行士だったころの記憶

誰も未来以外の呪文を唱えられない 1センチのりんごの樹の下で

憂鬱はダブル・スウィートでもてなして 濃くなるきみの光を見てる

そんなこと考えてるよりやることがたくさんあるでしょ、って妖精

たとえば友達がオーダーする料理 この世界そうではない世界

帰り道ロング缶持って笑ってよ おきまりの「ファンサービス」と一緒に

横断歩道 手つなぎ歩く超新星 一秒ごとにちかづく未来

街中で気軽に産まれる運命をフラミンゴに変えて野生に放つ

大雪の日に先陣を切る僕の足音を踏むきみの足跡

静止画のように漂うタンカーの下で迷子のジャンボジェット機

くし切りのレモンが代わりに泣いてくれて新着通知は読まずに消し

蜜蜂の羽音を聞くと甘い蜜こしらえる花ぼくらに似てる

地下鉄できみが寝たとき眠らない 僕が寝たとききみ寝ないから

アネモネが赤い花だと明かすまであなたが明日を愛せる日まで

包丁を持つと聞こえる母の声 大丈夫ありがとう猫が鳴く

花に色があるのと同じ理由で人はやさしい ずるい かわいい


もう未来なんて現地調達 指のハートがプラチナになる

台風前夜 あの水族館の鮫たちも眠れず青い光を揺蕩う

劇場が光を思い出す前に流れる涙の天然水

オペラ座の赤一杯に世界が腰掛けて待っている きみを待ち焦がれている

湾岸の光を浴びたベイビィズ バスはあと少し来なくていい

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